最高裁判所第二小法廷 昭和26年(れ)1867号 判決 1952年2月15日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
被告人斎藤実の弁護人田野功の上告趣意(後記)について、
被告事件の起訴後第一回公判期日までの間に、被告人の勾留及び保釈の決定をした裁判官が、その事件につき第一審の審理判決をしたとしても、憲法三七条一項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二四年新(れ)第一〇四号、同二五年四月一二日大法廷判決)の趣旨に徴して明かである。従って、所論中憲法三七条一項違反の主張はその理由がない。その他の論旨は刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。
被告人重原健一郎の上告趣意(後記)について、
実刑を科することが被告人の側からみて過重の刑であるとしてもこれを以って憲法三六条にいわゆる「残虐な刑罰」ということのできないことは、既に当裁判所の屡々判例とするところであって、論旨は理由がない(昭和二二年(れ)第三二三号、同二三年六月二三日大法廷判決参照)。
被告人湖島五郎の弁護人三枝重太郎の上告趣意(後記)について、
論旨第一の(一)及び(二)は憲法違反を主張するけれども、その実質は単なる訴訟法違反の主張にすぎないから、同(二)と共にいづれも刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。
被告人金親豊の弁護人田口二郎の上告趣意(後記)について、
論旨は憲法三一条違反を主張するけれども、その実質は単なる訴訟法違反及び量刑不当の主張にすぎないから、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。
また、記録を精査しても、本件について刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって、刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)